座談会 2011年度参加 元那覇高自然科学部 知識と経験 今も生きる

 新報サイエンスクラブは、初年度の2011年度に限り高校生も対象とし、県内高校から11チームが参加した。那覇高校自然科学部からも2チームが参加した。当時部長だった高良俊輝さん(25)=株式会社ネットワーク勤務、中村理乃さん(24)=沖縄美ら島財団勤務、眞榮田紅亜さん(24)=同=に研究の思い出などを聞いた。(文中敬称略)
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「チームのまとめ役、社会で役立った」高良俊輝さん

 ―自然科学部入部のきっかけは。
 高良俊輝 部の顧問をしていた宇佐美賢先生の授業を初めて受けた時、理科の素晴らしさを力説していたのが印象的で、部活に興味を持った。もともと実験が好きだったのもある。
 中村理乃 私も理科が好きで、部の存在を知り、見学に行こうと思っていた。やはり宇佐美先生が授業で部活の紹介をしていて、楽しそうだと思った。
 眞榮田紅亜 地学が好きだった。高校に入学してしばらくは別の部活と兼部していたが、勉強と部活の両立が難しくなり、自然科学部を選んだ。自然科学部にはプラネタリウムがある。星が好きなので興味があった。実験をやってみたいというのもあった。

 ―新報サイエンスクラブでは那覇の気象を研究した。このテーマにした理由は。
 高良 部には、気温や湿度、風速などを測定しデータベースに蓄積していく気象観測装置があったが、それを使って研究する人がいなかった。せっかく装置があるのだから、それを使って研究したいと思っていた。
 中村 過去の研究資料を見ていたら、酸性雨で銅像が溶けている写真があった。沖縄でもこういうことがあるのかと疑問を持ち、酸性雨の影響を調べようと思った。たまたま先輩たちも気象を調べていたので、一緒に研究することになった。
 眞榮田 兼部をやめて、自然科学部に来られるようになった時には既に研究テーマが決まっていた。ただ私自身、雨が好きで雨を調べることを決めた。雨は人に嫌われがちだが生物に必要なもので、地球が生きていると肌で感じることができる。音、においも好きだ。


「発表で悔しい思い。追い付こうと必死に勉強」中村理乃さん


 ―研究して良かったこと、学んだことは。
 中村 気象や台風について3年間研究したが、選択科目では生物を取り地学は選んでいなかった。新しい科目を学ぶような新鮮な気持ちで研究に取り組めた。パソコンを駆使しデータ分析などをしたことが今も仕事に生きている。
 眞榮田 身近な気候について身をもって知ることができた。例えば沖縄は亜熱帯気候といわれるが、ミクロの視点で見たときにどうなのか。那覇の気温、雨などを観測し、やはり沖縄は亜熱帯気候だと確認できた。実験を通して身をもって体験したことで、理解が深まった。
 11年はラニーニャ現象が起きた年だった。あまり知られていない気象現象を観測データから突き止めて、先生のサポートを得ながらラニーニャ現象だと確認できた。ニュース発表より先にデータによって実感できた。
 高良 研究チームのリーダー的役割を担った。みんなで一つの成果物を求めるまとめ役の経験を積めたことが良かった。現在、仕事でプログラマーをしている。理科と違う分野だが、チームで仕事をしており、高校の経験が生きている。研究にはチームワークが必要で、それが社会人になった時に役に立った。


「災害予測、研究で得た力」眞榮田紅亜さん


 ―逆に大変だったことは。
 中村 サイエンスクラブに参加した11年度、県代表として九州大会に行った。私は地学を取っていないため知識が浅く、他県の人からの質問に答えられないこともあった。「研究しているのに、それじゃだめだよ」などと言われ、悔しい思いをした。研究でも、他の部員より理解していないことがあり、追い付くのに必死だった。
 眞榮田 研究は毎日データを集計することから始まる。集まったデータをまとめて分析し、文書に落としていくことが難しかった。私も研究を始めた当初は、地学を勉強しておらず、例えば酸性雨とは何かの定義から学ばないといけなかった。気象を深く学ばないといけないというのが大変だった。
 高良 気象は季節に左右されることがとても多い。データはあるが、振り返った時に暑かったか、寒かったか、天気はどうだったかという記録が、季節で偏りがあった。研究をまとめる時季が夏ごろだったので、夏の記録は書き込めたが、冬の記録が薄くなったのが課題だった。


那覇高校自然科学部での研究を振り返った(左から)眞榮田紅亜さん、高良俊輝さん、中村理乃さん=那覇市泉崎の琉球新報社


 ―研究で学んだこと、今に役立っていることは。
 眞榮田 同級生に比べて気象に興味を持っている。今、沖縄美ら島財団では、海洋博公園内で勤務している。来園者に、楽しく安全に施設を利用してもらうためにも、雷や豪雨などによる災害が発生しないか予測し、公園内のスタッフへ共有・周知することも大事な仕事の一つだ。先輩たちは常に気象庁など複数の関係機関のホームページで気象予測を調べている。財団に入った当初、もし研究をしていなかったら、必要な気象情報を収集する力がなかっただろう。もちろん、今でも先輩方には及ばないが、必要な情報を収集する力は高校時代の研究で得たものだと思う。
 中村 私は沖縄美ら海水族館を担当しているが、やはり気象情報の収集が大事だ。台風が近づいていて、何時間後に暴風域に入りそうだと予測し、備える。研究していなかったら、情報の取り方や気象の変化も分からなかったと思う。
 高良 研究していた当時、1日6時間ほど作業することもあった。それが苦ではなく、楽しかった。自分にはこういう適正があるんだと思った。大学で就職活動をする時もそれが頭にあって、就職につなげることができた。
 大学は県外に進学した。それも、研究発表で九州大会などに参加して県外の人と話すと勉強になると知ったからだ。
 顧問の宇佐美先生の存在も大きい。ずっと部活で一緒だった。好きなことを研究させてくれて「専門分野じゃないから一緒に調べよう」と言ってくれた。部活の時は先生と生徒の関係ではなく、一緒に研究する仲間のようで、多くの影響を受けた。

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